特定商取引法改正(2023年6月1日)による契約書のデジタル提供の方法

特定商取引法の対象ビジネスは紙媒体の契約書を交付するのが原則となっています。
それが法改正(2023年6月1日施行)により、一定の要件を満たせば契約書のPDFファイルをメール添付などのデジタル形式での交付が可能となります。

 

法改正後も、特定商取引法の対象ビジネスでは契約書を紙媒体で交付するのが原則という点は変わりませんが、例外措置として紙媒体の承諾書(契約書のデジタル提供について承諾を得たことを証する書面)を交付して、その承諾書の事業者控えに消費者の署名を得て回収・取得することで、契約書ファイルをメール添付送信などの方法でデジタル交付することが認められるようになります。

 

承諾書(契約書のデジタル提供について承諾を得たことを証する書面)の交付についての手続の流れは、以下のA・B・Cの3つのパターンがあります。

 

【A】事業者が対面もしくは郵送で紙媒体の承諾書を交付
(1)紙媒体の承諾書の消費者控えと事業者控えを手渡し、もしくは郵送で交付する。
(2)承諾書(紙)の事業者控えに、消費者の署名と説明を理解した旨を記入してもらう。
(3)承諾書(紙)の事業者控えを回収し、事業者が保管する。
(4)契約書ファイル(PDF)をデジタル交付する。
契約書ファイルのデジタル交付の方法は以下のとおり。
a)電子メール添付による送信
b)消費者の情報端末にファイル保存させる。SNSも可。
c)USBメモリ等の電子媒体に記録して交付
(5)契約書ファイルは消費者が印刷できる形式で交付すること。
(6)電話か電子メール等で消費者が契約書ファイルを閲覧できるか確認すること。

 

【B】消費者がPDF承諾書を印刷し、事業者が郵送で紙媒体の承諾書を交付
(1)事業者からの電子メール添付もしくはホームページからダウンロード形式により、消費者が承諾書の内容を確認する。
(2)消費者がメール送信もしくはホームページの承諾専用フォームにより承諾手続を行う。
(3)取得した消費者の承諾の情報証拠を事業者が保存する。
この承諾の情報証拠は印刷できる形式でなくてはならない。
(4)事業者が承諾書(紙)を発行し、これを手渡しもしくは郵送で消費者に交付する。
(5)契約書ファイル(PDF)をデジタル交付する。
契約書ファイルのデジタル交付の方法は以下のとおり。
a)電子メール添付による送信
b)消費者の情報端末にファイル保存させる。SNSも可。
c)USBメモリ等の電子媒体に記録して交付
(6)契約書ファイルは消費者が印刷できる形式で交付すること。
(7)電話か電子メール等で消費者が契約書ファイルを閲覧できるか確認すること。

※連鎖販売取引・業務提供誘引販売・特定継続的役務提供については、契約書の他に概要書も交付しなくてはなりません。

 

【C】承諾書をデジタル交付する場合(オンライン完結型特定継続的役務提供のみ)
(1)承諾書の内容を以下のいずれかの方法により消費者に交付する。
a)電子メール添付による送信
b)消費者の情報端末にファイル保存させる。SNSも可。
c)USBメモリ等の電子媒体に記録して交付
(2)消費者の承諾を以下のいずれかの方法により取得する
a)消費者からの電子メールによる承諾
b)ホームページに承諾専用フォームを設けて承諾手続
c)USBメモリ等の電子媒体に承諾を記録
(3)取得した消費者の承諾の情報証拠を事業者が保存する。
この承諾の情報証拠(=承諾書)は印刷できる形式でなくてはならない。
(4)契約書ファイルと概要書ファイル(PDF)をデジタル交付する。
契約書・概要書ファイルのデジタル交付は以下のいずれかの方法により実施。
a)電子メール添付による送信
b)消費者の情報端末にファイル保存させる。SNSも可。
c)USBメモリ等の電子媒体に記録して交付
(5)契約書・概要書ファイルは消費者が印刷できる形式で交付すること。
(6)電話か電子メール等で消費者が契約書ファイルを閲覧できるか確認すること。

 

事業者が契約書ファイルのデジタル交付を優遇する措置を設けるのは禁止されており、デジタル交付を選択する消費者に対して値引き等のメリット提供をしてはならないので注意が必要です。紙媒体の契約書交付を選択する消費者に手数料等を請求するデメリットを与えることも禁止されています。

 

特定商取引法の対象ビジネスでは、契約書ファイルのデジタル交付をするためには、紙媒体の承諾書を用意して事前交付して事業者控えを回収するというひと手間が増えることになります。
この紙媒体の承諾書交付を事業者が怠った場合は、契約書の交付方法に不備があったという扱いとなり、行政処分、行政刑罰、契約取消というペナルティ対象となります。

 

【C】の「承諾書をデジタル交付」が可能になるのはオンライン完結型の特定継続的役務提供のみです。
訪問販売や電話勧誘販売等のアウトバウンドビジネスでは、【A】か【B】の承諾書を紙媒体で交付するひと手間が必要になります。
なお、従来通りに契約書の紙媒体での交付を行う場合には、承諾書の新ルールは影響ありません。

 

こうした特定商取引法の契約書をデジタル交付するための承諾書の雛形と新ルールについて、解説書(PDFファイル29ページ)を作成しております。
その解説書については、以下のテキストリンク先のウェブページにて販売しております。

 

特定商取引法に対応した契約書のデジタル交付のルール解説と承諾書雛形

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